この夏、やり残した10のこと



「えーと、五個でいいのかい?」

「はい。バニラが三つと、チョコが二つで」


お店のカウンターで注文する薫の声を聞きながら、じりじりと焼き付けてくる太陽を感じる。
雫も近江くんも日差しに眉をひそめていたけれど、霧島くんは平然としていた。彼の汗には清涼さすら窺える。

私がこの夏にやりたいことの二つ目は、「帰り道に友達とアイスを食べること」。
寄り道をして、友達と感想を共有して。特別面白いことがしたいわけでも、冒険がしたいわけでもない。ただ、弱った心身を平穏な日々の中で癒せたら、それだけで良かった。


「一個二百五十円ね」

「はーい」


二つのチョコ味は、薫と霧島くんだ。
ここのチョコ美味いよ、と霧島くんはさっき言っていたのだけれど、私はやっぱりソフトクリームはバニラが一番美味しいと思う。

それぞれコーンを受け取って、誰ともなく、ぱくりとアイスの先っぽを口に入れた。
うぅん、と冷たさに唸った薫が、雫の腕をつつく。


「雫、バニラ一口ちょうだい」

「嫌なんだけど」

「えー、ケチ」

「……遥香の分、もらえば」

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