私は1人じゃない



「蓮、あの子、霧野ちゃん?」



凌が屋上で変なポーズを取りながら俺に言って来る。


ヨガポーズかそれ。


「ほーら、気になってるんでしょ」


ついに体育祭の時に、杏衣に話しかけて散々跳ね返されたがなんとか杏衣の頭の中には残すことができた。


凌も最初は揶揄ってきたが今は何も聞いてこないで杏衣に近づこうとしている俺に協力してくれている。


と言っても本当に恋愛感情はない。はず。


恋愛感情なんてとっくに捨てた。


だから凌がニヤつくような理由で近づいている訳ではない。


でも気になるためベンチから立って見ると杏衣が男と話している。


あぁ、体育祭で告白して振られた人か。


あいつ恋愛しないらしいから告白しない方が気持ちが持つんだろうけど好きなんて気持ちはとっくの昔に無くなってるから俺も恋愛のノウハウはよく分からない。


ただ女から求められたことをしてきただけ。


「霧野ちゃん綺麗だね〜〜」
「……そうかもな」


「話しかければ?」


体育祭終わりに話しかけたけど完全に不審者を見る目だったし、遠ざけてるみたいだった。


まぁいきなり話しかけて来たから気持ちは分かるがあんな目細めて敵のように扱わなくてもいいだろ。


でも敵も味方になることがある。


俺はあいつが気になっている。


どうすれば杏衣を知れるか、近づけるか。


綺麗なままの杏衣を汚さずに近づけるか。


そればかりを考えていたら、グラウンドにいる2人と目が合う。


杏衣は俺の存在に気づいたらようですぐに校舎の中に入っていった。



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