私は1人じゃない



「ねえ」


確実に怒ってるような低い声。


杏衣は俺らと関わりたくないんだろう。


怒りのオーラが出ちゃってる。


俺と凌は学校に来ても殆ど屋上にいる。


ベンチから立てばグラウンド全体が見える。


それは不可抗力、俺にどうもできない。


杏衣はそれを言ってもあり得ないみたいな顔をしている。


それでも杏衣は帰ろうとする。


帰ってほしくなかった。


久しぶりに俺から女を引き留めた。


理由は俺にもよく分からない。


ただ気になる。


目の前にいる杏衣が俺の頭から離れない。


離れないから、気になるから近づいてみたい。


ただそれだけ。


それに不思議なことに杏衣には手を出そうとか汚い気持ちが出ない。


俺にとっては珍しい、体関係以外の女友達が杏衣になって欲しい。



……本当に俺どうした。
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