私は1人じゃない
杏衣は俺らと友達になることを断固拒否しているようだが、俺の気持ちもそんなに弱くない。
「もう友達だ」
と言ったらとことん嫌な顔してるが、凌の誘導もあって杏衣が折れてくれた。
大きな溜息をついて、「幸せが逃げる」と言ったら急に泣き出した杏衣。
理由は分からないが杏衣は相当体だけじゃなくて心にも傷を負っているのだろう。
我慢して我慢して耐えてきたんだろう。
逃げるのは悪くない。
どんな手を使っても自由を手に入れていい。
自由に自分の人生を決める選択肢があるって言いたかったが、杏衣の涙を見たら言葉を飲み込んでしまった。
ただ手を握ったら杏衣は顔を上げて、びっくりしたような顔をしていた。
すぐに手を退かされたが、俺は杏衣の暖かさに触れていたいと思った。