私は1人じゃない
目を開けると、ポトッ、ポトッとささやかな音が聞こえる。
真っ白い天井に左を向けば白のカーテン。
「目覚めた?」
白衣を着ていて眼鏡をかけている男性が私の顔を覗き込むように見てくる。
ここは…………病院。
私はママからたくさん叩かれて病院に運ばれたんだろう。
そして多分運んできてくれた人は………勇斗さん。
「僕は内科医の早坂雅紀と言います、安心して、勇斗の大学の同期で友達だから、ここには勇斗が連れて来てくれてまる1日ずっと起きずに寝てたんだ」
全身の傷をいくら医者でも見られるのは躊躇われる。
でも勇斗さんの友達なら少しは安心する。
「少し様子見て診察するから待っててね」
「はい…」
自分の体を見ると、お腹や背中、腕にまで青タンができている。
少し動くだけで痛い。
いつもは腕とか人に見える部分はされないからここまでされるのは初めて。
この傷は人には見せれない………
今は秋だしブレザーを着ているからなんとかなるから良かった。
早坂先生が来て処置をする。
腕にアルコールが染みた綿が当たると染みて痛い。
「少し我慢してね」
「は、はい………」
「ちょっと時間がかかるからリラックスしてね、大丈夫だから」
左腕全体にあざが出来ていて、何回も綿を変えて消毒をする。
「勇斗と暮らしているんだよね、勇斗から聞いたよ」
処置しながら早坂先生が話す。
「そうです」
「勇斗、すごい心配してた」
「そうなんですか…」
何となく想像できる。
「大丈夫、大丈夫!?」って言ってずっと見守ってくれそう。
「勇斗のこと好き?」
いきなりの質問で体を正面に向けてしまう。
「杏衣ちゃん、今してるから動いちゃダメだよ」
「あ、すいません…変なこと聞くから」
「あ、そんなに変だった?」
「いきなりじゃないですか」
「ずっと一緒に住んでたらそういう想いを抱いても仕方がないと思って、勇斗、優しいしイケメンだし」
「優しいとは思いますけど恋愛感情とかは……」
あれ、「ないです」が言えない………
優しくて勉強を教えてくれて、
自炊も少しずつだけどしてくれて、
本当に申し訳ないくらいに私にいろいろしてくれている。
本当に優しい勇斗さんで、私の学校の先生でもある。
それ以上もそれ以下もないとずっと思っていたから、「好き」じゃなくて、「一緒にいて居心地がいい」
私にとって勇斗さんはそういう存在。
だと思っていたのに、聞かれると声が出ない。
ということは、私が思ってたことは自分騙しの気持ちなのだろうか。
私は勇斗さんにとってどんな存在なんだろう…
私は勇斗さんに対してどう思っているんだろう…
本当の気持ちが自分でも分からない。
「とかは……?」
「な、いと、思います……」
めっちゃぎこちない返事になってしまった。
「声小さいなあ〜隠さなくてもいいのに」
「本当です……」
笑いながら早坂先生は私を見る。
「もう終わったよ」
「ありがとうございます」