私は1人じゃない
「杏衣ちゃん、何かあったら絶対にメールか電話をするんだよ」
そう言うと杏衣ちゃんは少し安堵して家に入った。
杏衣ちゃんの家に来るのは2度目。
しっかり見ると家がレンガ作りで豪邸。
門しか見えないけど庭は一軒家くらいに大きいと思う。
車にいてもすることがないから、近くのカフェに行ってコーヒーを買って車でスマホをいじって時間を潰す。
いつの間にか1時間が経っている。
早く来ると言っていたけど結構話しているのだろうか。
大事な話でもしているのか。
2時間経っても杏衣ちゃんは来ない。
電話しようか迷う。
もしかしたら何かあったのか。
最悪の事態を考えてしまう。
杏衣ちゃんのお母さんが『ああいう人』だと分かっているからこそ最悪の事態を考えてしまう。
1回電話をしても電話に出ない。
どうしよう、焦ってきた。
どんどん俺の想像が現実になる気がして不安が来る。
でも1番怖いのは杏衣ちゃん。
助けなきゃいけない状況なのにその声さえ出ない………
これはまずい。
何してる俺、スマホなんてしてる場合じゃない。
なんとしてでも杏衣ちゃんを助けなければ。
でもどうやって入ろう。
まずこの家は門からが鉄壁になる。
でも諦めるわけには行かない、なんとしてでも杏衣ちゃんを助ける。
じゃなきゃ俺が来た役目がない。