私は1人じゃない
「家に送ってください」
1回家に入って、お金とか服とか必要最低限のものを取ってこないと。
それからホテルにいくかネットカフェに行くか考えればいい。
ずっとこの人の世話になる訳にはいかない。
「家に戻るの?」
「はい」
「本当に戻りたいと思ってないんじゃないの?」
「どうして…」
「顔に不安が出てる」
この人人間観察が得意なんだろう。
人の気持ちが分かるってすごい。
「家には戻らないで、家が怖いんでしょ」
「………」
この人は何がしたいんだろう。
昨日私と出会ったばかりなのに、私の気持ちが分かってるし、私のことを可哀想とでも思っているのかな。
昨日もさっきも泣いてばかりだから、弱いなこいつとでも思っているのかな。
そして私はこの人に頼っていいのかな。
「家に1人で入れる?」
「はい」
とは言っても少し怖い。
暴力は日常茶飯事なのにまだ怖いと思ってしまう。
でも今は日中だし誰も家にいない可能性が高い。
落ち着こう、大丈夫、荷物取ってくればいいだけ。
「じゃ、いってきます」
「絶対戻ってくるんだよ」
男性の目が優しいけど力強くて、頼むって目をしてたから逆らえないと思った。
「はい…」