私は1人じゃない
恐る恐る家に入ると、ママと霧野さんはいなかった。
リビングには大量のお酒の空き缶と、デリバリーのゴミがテーブルに放ったらかしになっている。
思いっきり出て行ったら、心のどこかで吹っ切れた部分があって、
もうどうでも良くなった。
ママが私を捨てたなら、戻ることはしない。
ママに迷惑をかけるし、私にも良くない。
もうママに期待するのも、応えるのも疲れた。
私のことなんて考えなくていいから霧野さんと仲良く過ごしてほしい。
そうやって考えないと私は生きていけない。
いや、正直、生きたいとは思ってない。
でも「生きなきゃいけない」から。
「死ねない」から、「生きるだけ」
生死の選択肢は人間にはないから。
服と通帳と制服、教科書、必要最低限のものだけを早く詰めて家を出る。
「意外と早いね」
「誰もいませんでした」
「良かったね、じゃ行くよ」