私は1人じゃない
「蓮………やめて……」
「…………」
「蓮とは友達、それ以上もそれ以下もないよ…」
「…………」
「だから離れて」
「そんなに俺が嫌か」
「嫌とかじゃない、でも蓮のことを好きには……」
「うるさい」
「拒否権ない」
「拒否権あるから」
「………っ…………ぅうっ…………」
急に塞がれた唇。
荒々しくて濃厚なキス。
「………っれ、れっ、、、」
蓮の肩を叩くと、蓮はすぐに離れてくれた。
「悪りぃ、杏衣の前だと自分を保てねえ、すぐに俺のもんにしたくなる」
「………大丈夫だよ」
少し乱暴な気がして息苦しかったけど、すぐに謝って蓮は余裕がなかったと思う。
「少し落ち着いて」
「お前の前にいると落ち着かねーの」
「だったら帰るから」
「そういうことじゃない、杏衣といると俺らしくいられないだけだ、いないと寂しいからここにいろ」
「蓮も寂しいと思うんだ」
「………お前がいないとな」
「一緒に暮らさないか?」
「……無理だよ」
「杏衣、家出たんだろ」
「え?」
「たまたまだけどな、お前がマンションに入っていくところが見えて、お前の実家ではないよな、一人暮らししてるんだろ」
蓮、するどい。
実家ではないけど一人暮らしはしていない。
でも勇斗さんと暮らしていることはバレていないみたいで安心する。
「蓮とは暮らせない」
「なんでだよ」
「………と、友達と暮らしているから」
「………そうなのか」
嘘つきたくなかったけど、仕方がない。
勇斗さんと暮らしていることは“特に”蓮には言ってはいけないような気がする。
蓮の想いが本当だと思ったからこそ、蓮に会うのが苦しくなる気がした。