私は1人じゃない
杏衣は戸惑っていて、何度も離してと抵抗してくる。
腕は痛いはずだがそれよりも俺の気持ちが抑えられなくて強く抑えてしまう。
誰かを俺のものにしたいと思うのは初めてだ。
感情をコントロール出来なくて衝動的に行動してしまう。
心のどこかでは杏衣が断ると分かっていても。
「もう女と遊ばねえ、杏衣だけでいい」
「お前の全てが知りたい、そしてお前の全てを知って欲しい」
「俺だけを見ろ」
「俺を好きになれ」
思ったことがバンバン出てしまう。
誰かが俺を動かしているようだ。
本当に杏衣の前では俺が俺じゃなくなる。
ほとんど告白に近い言葉を出してしまった。
杏衣はなにも喋らない。
まるで俺の言葉を拒否しているのように。
「……蓮、やめて………」
「蓮とは友達でそれ以上もそれ以下もないよ……」
俺が聞きたくない言葉しか出てこない。
でも付き合えるとは思っていない。
杏衣が恋をしないのは分かっていたし俺をあからさまに拒絶している。
俺が強引なだけで、付き合うのまで拒否権なしとは俺もそこまで冷淡じゃねえ。
でも心のどこかではショックで、
気付いたらキスをしていた。
優しくない、欲のままにしてしまった。
杏衣の声が俺の耳に響いて俺を狂わせる。
杏衣から肩を叩かれてから我に戻る。
大事にすると決めているのになんてことをしたんだ俺。
杏衣の顔を見ると怒っているよりはなんか不思議そうな顔をしている。
杏衣に言われたとおり落ち着かなければいけない。
杏衣の方が落ち着いているのが情けない。
杏衣がまた帰ると言うから「ここにいろ」
と言うとやっぱり拒否された。
この家一人で住むのはあまりにも大きすぎるから同居人が欲しいんだよな。
まぁ、これから俺のものする決意ができたからショックはさっきよりない。
杏衣の家庭状況を知っているから1人暮らしをしているはずだ。
だから同じ傷を負っている俺と一緒に住んで欲しいのだが、
“友達と暮らしている”というから渋々下がったけど、杏衣の目が泳いでいて、友達と暮らしているのは嘘に見える。
小さい頃から人の顔色ばっか伺って生きてきたからちょっとの表情の変化でなにを考えているか大体分かるようになった。
それにあの恋愛本を読んでいるのも気になるし、杏衣と一緒住んでいるのは好きな人となんかじゃないか、彼氏がいるのではないか………ーーー
「もっと奪いたくなる」