私は1人じゃない



「この部屋の様子だと彼女いないな」
「うるせえな、出会いがないから付き合えないだけだ」


「人見知りも関係してるだろ」
「でも最近合コン行ってる」


「翔平が?」
「研究ばっかしないで結婚しろって親がうるさいし、年齢も年齢だからな」


「それで彼女は出来たのかよ」
「気になる人はいるけど付き合ってない」


「アピールしろよな」
「どうやって」


と言っても、俺も過去の恋愛でアピールとかした覚えがない。


好きになる人は大体相手も好きになってくれたから。


追いかける恋ってのは杏衣ちゃんが初めて。


「知らないけど、好きだって伝えればいいんじゃないのか」
「そんな簡単じゃないだろ」


ど正論。


今俺がその壁にぶち当たっている。


「好き」だと言おうと思えば言える。


でも言っちゃいけないような、言えないような。


中途半端に好きと言って杏衣ちゃんを守れるかと言ったらそうではない。


でも俺を好きになって欲しいしそばにいて欲しい。


どうすればいいか分からずに俺の恋は止まっている。


「どんな人?」


写真を見せてくれた。


翔平が勇気を出してご飯を食べに行ってその時に撮った写真。


ポニーテールで俺らより年下に見える。


目の下のほくろがチャーミング。


「可愛いじゃん」


杏衣ちゃんが1番可愛い。


「名前は萩原 友梨って言うんだけど、研究所の職員として働いてて同じ分野の話が合うし綺麗だし俺は好きなんだけどさ」
「なんだけど?」


「友梨ちゃんはもっと大人っぽくて引っ張ってくれる人がいいって言ってるんだよね」
「あー翔平じゃない」


「引っ張るってなんだよ」
「……自分を好きになってもらえるように仕向ける的なことかな?」


「そんなテクニック覚えてない」
「俺もそんなの知らない」


「いいじゃん、勇斗は、すぐに女の子に振り向いてもらえるから」
「………そうだったかもな」


俺も過去は近づいてくれた女性で嫌なら断って好きになれそうだったら付き合う。


そんな気持ちで付き合っていた。


でも今は違う。


今は近づかないと付き合えない。


でも近づけない。


「勇斗はいるのか、彼女」
「いないよ」


「もうあいつとは整理ついたんだろ」
「そりゃぁな」


「好きな人もいないのか?」
「…………いないって訳ではないな」


「いる!いるな!誰だ!!」


急にハイテンションになった翔平。


人見知りで困ってるような雰囲気が一気に消えた。



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