私は1人じゃない



杏衣ちゃんを探しに外に出ると、雨が降っている。


杏衣ちゃんは傘を持って出かけただろうか。


子供じゃないし心配しすぎだと思うけど、心配になってしまう。


歩きにくいだろうし大丈夫かな。


電話をかけても出ないし、杏衣ちゃんのお母さんのところに行ったとは考えられないし、


「どこに行った……?」


駅から出てきたポニーテールに深紅のワンピース。


傘を差しているけど顔が見えた。


「杏衣ちゃん…」


でも傘を差しているのは杏衣ちゃんだけではない。


隣に誰かいる。


それも男。


男のサイズであろうスニーカーが見える。


誰といるかが気になって少し近づいて見てみると、


「水樹……」


あの横顔は水樹 蓮。


なんで水樹と杏衣ちゃんが……


嫌な想像しか出来ない。


もしかして付き合ってる…?


体育祭の時も杏衣ちゃんと一緒にいたし………


もっと言えば俺が南高に赴任してすぐに補習に参加しないで廊下で霧野は休んでいるのか」って言っていたのも水樹と佐久間。


あの時点から水樹と杏衣ちゃんは何らかの関係があるってことになるよな……


俺は今年の夏に知り合ったばかりだけど水樹と杏衣ちゃんは高校生、もしくはそれより前から知り合っている可能性がある。


そしたら恋愛に発展する可能性も……


杏衣ちゃんが彼氏いないとははっきり聞いていない。


ただ杏衣ちゃんを見て好きな人はいない、彼氏はいないと勝手に俺が決めつけていた。


好きな人いるかもしれないし、彼氏がいるかもしれない。


それが水樹かもしれない。


杏衣ちゃんが退院の日に俺に抱きついてきたし、俺が近づいてもあまり拒否しなくなったから、俺のこと気になってるのかなとか今まで俺の都合のいいように勝手な解釈をしていただけ。






杏衣ちゃんが俺に内緒で彼氏がいるかもしれない。



でもなんか、



「やだな」


杏衣ちゃんが彼氏いるって、好きな人がいるってだけでモヤモヤする。



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