私は1人じゃない



家に戻るとまだ杏衣ちゃんはいなかった。


急いで濡れた部分を拭いて着替えてくつろいでいるフリをする。


頭の中は杏衣ちゃんに好きな人がいるかどうかどうやって聞こうか、


もし彼氏がいたらどうしようとかそれしかない。


「勇斗さん、帰ってきました……」
「お、おかえり」


いつの間にかリビングにいて、着替えている。


もうとっくに家に着いていたんだ、俺が考えすぎで気づかなかっただけ。


「遅かったねどこに行ってたの?」
「図書室に行ってました……」


なんで嘘をつく……?


水樹の顔ははっきり見た。


水樹の傘だと思われる黒い傘で一緒にここまで帰ってきたのになんで嘘を?


「ずっと図書館ではないよね、こんなに夜遅いし」
「……途中で友達の家に行ってそれで遊んでて遅くなった、ごめん」


水樹とは友達なのか、それとも……


「大丈夫だよ、でも遅くなるならメールしてね心配になっちゃうから」
「うん、ごめん」


「シャワー浴びておいで」


彼氏いるかなんてハッキリ聞けない。


「勇斗さん」
「うん?」



「シャワーまだしてないけど……」


俺に抱きついてきた。


軽く俺の肩を両手で触れて。


ラベンダーのような匂いの香水が俺を壊してくる。


「杏衣ちゃん、どうした……?」
「落ち着くから」


俺とこうすると落ち着くってこと?


そう言うことだよな、日本語をストレートに理解するとそう言う意味になる。


俺以外の男として俺ともするとは思えないし、


水樹とはただ会っていただけなのかもしれない。


自分勝手な解釈だけどそう思いたいーーー………
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