私は1人じゃない
「お前に拒否権ないよ」
耳元でささやかれた声はあまりにも甘い声で思わず目を大きくして漣を見てしまう。
「なにその顔可愛い」
また耳元で囁かれる。
気を緩めたら甘すぎて倒れてしまいそうだからスカートの裾を握る。
口角を上げて私を見ている蓮。
なんでそんなに余裕がある顔をしているのかが不思議。
「ねー、2人付き合ってるの!?」
「蓮と霧野さんお似合いだな〜」
「高嶺の花って感じ〜!」
「本当美男美女すぎる」
周りのガヤは収まらない。
かえって熱くなってる。
「蓮、一緒に回らないからやめて」
私が蓮を好きになれないって知ってるのに、
私が“拒否権”を使って蓮を拒んだのに、
なんでそれ以上の力で近づこうとするの。
なんで私を惑わせるようなことをする。
「やめない、俺ら付き合ってるんだから一緒に回っていいだろ?」
大きな声で蓮がそう言った。
いまわざと大きな声で言ったでしょ。
周りに聞こえるように。
拍手や悲鳴が聞こえて、アイドルのライブ中みたいな感じになっている。
「ちょっと、蓮!!」
ウソ、100パーセントウソ。
なんでそんな嘘をつくの?
「いや、付き合ってない、付き合ってないから!」
流石にデマを流されるのは嫌だから、嘘だと言ったけど、
「謙遜しなくていいんだよ!2人お似合いだもん!!」
「悔しいけど霧野さんを諦めないとな〜」
謙遜してないし、なんで信じてくれない。
私より漣の言葉を信じるってか。
「ほら、こんな雰囲気だよ断るつもり?」
「なんでここまでするの?」
「俺はお前が好きだから」
「でもここまでしなくてもいいじゃん!」
「俺はお前を諦められない、何としてでも杏衣を手に入れるから」
この男から振り回されてOKするしかなかった。