私は1人じゃない




昼休み。


3限まで全く授業は頭に入らなかった。


蓮を呪ってしまおうか、なんとかして阻止できないかしか考えられなかった。


勇斗さんがせっかく作ってくれた弁当が味がしない。



「杏衣、何があったの、あのモテモテ2人組と!」


朱莉が食い気味で聞いてくる。


前は恋愛に興味がなかったのに桜介と付き合ってから恋バナとか恋愛に興味を持つようになっている気がする。


やっぱり恋の力は大きいのかな。


「いや、何もないよ…」
「嘘つかないで、何もないのに水樹が杏衣を誘う訳ないじゃん!!」


そうだよね、何もないって言って通用するわけがない。


蓮が私と“付き合ってるということ”にしているのに、何もないって言って信じる人は誰もいないのは分かってる。


「あの2人が勝手にしつこく話しかけてきただけで……」
「さすが杏衣」


全く褒め言葉になってない。


「やめて」
「でも修学旅行一緒に行くんでしょ?」



「行くわけない」
「2人付き合ってるんでしょ?」


「朱莉!」
「はいはい、分かってるよ、付き合ってないんでしょ」


「大正解」
「でもみんな信じちゃってるよ、もう噂が学校中に広がってる」


人の口は軽い、軽すぎる。


そして噂話大好き。


1年生や3年生にも2人のファンは沢山いるだろうから、学校中から注目されるのは勘弁。


付き合ってないんだから正当な理由じゃない。


視線を集める理由なんか1つもない。


でもわたしが大きい声で付き合っていないと言っても、蓮が一言杏衣と付き合ってるなんて甘い声で言えばみんな蓮の方を信じる。


どうすればいい、どうすればいいんだ……。
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