私は1人じゃない
「なんで俺教師になったんだっけ」
1年前、ふとそう思った。
兄も姉も両親も、家族全員お固い公務員。
だから、俺も公務員になるんだろうなと他人任せな気持ちで一生の職業を決めてしまった。
そこに自分の意志なんてなかった。
「自分の人生は自分で決めるべき」
そんな簡単なことを今まで知らなかったなんて馬鹿らしい。
いや、馬鹿。
そう思って、1年間、休職して自分がしたいことだけをした。
ヨーロッパは家族で旅行に行ったことがあるから、インドやフィリピン、エジプト、カナダ旅行に行って、
写真が好きな俺は旅行中写真を撮って本を出版したり、
水族館に行ったりロードバイクしたり、
とにかく自分がしたいことをした。
それから1年後の今、そろそろ復職しないといけないと思いながらも正直働くのはめんどくさい。
それでも貯金をこれ以上崩したくないし、これ以上休んでもすることがない。
ただ酒飲んで寝るだけ。
映画を見ながらの酒とつまみは進む。
足りないからコンビニで買って帰る途中、噴水がある大きな広場を通るんだが、そこのいくつか並べられてるうちの1つの石のベンチに座って泣きじゃくってる女の子がいる。
ヒクッ、ヒクッと泣いてまた止んで、そして手で口を抑えながら泣き出す。
あぁー、なんか悲しいことがあったんだなと思って通り過ぎようと思った。
「結局1人なのかな……」
女の子がそう呟いた。
近くで見るとまだ高校生くらいの女の子。
不謹慎ではあるけど、とても綺麗な顔をしている。
なにがあったんだろう。
高校生くらいの子たちは、思春期だから色々悩みを抱えているのは誰にでもあることだが、
俺の経験上、高校生の時に過去とか本当に深い悩みがある子は生きていく上で一生のトラウマを抱えながら生きていく。
それを少しでも軽減できたら、と教師の時に思って担当した子の話を最後まで聞いたりできるだけ親身になった記憶がある。
授業を教えることだけが高校教師の仕事ではないと思っている。
泣いて、止んで、また泣いて。
女の子は顔を上げて、目を瞑って、
そのまま倒れた。