私は1人じゃない
「一生来ないから」
「それ言ったこと後悔することになるぞ」
「絶対にないから、だから一緒に回るのは………なにするの………!」
コンクリートの冷たい壁に追いやられてしまった。
そして壁ドン。
あの時のように目の前には蓮がいて、周りはざわついている。
「蓮、ふざけてる?」
「お前がふざけてるんじゃないのか」
「何が、私は本気だよ」
「俺も本気だ、杏衣を思ってる」
「私を思ってるなら離して」
「杏衣を思うから離さない」
この人とは話が噛み合わない。
この状況をみんなに見られてるのが嫌だし、近くに蓮の顔があるのがゾクゾクして逃げたくなる。
ドキドキじゃない逃げたくなるような恐怖心。
蓮の顔を見ていると、教卓に和藤先生が来た。
まずいと思って、蓮の手を振り解こうとするけど、男は強くてびくとも動かない。
和藤先生と目が合ってしまって、和藤先生がこっちをずっと見ている。
教室から出て行って欲しいのに何故か固まって動いてくれない。
「蓮、離して」
「一緒に行くよな」
「行かないよ」
「行かないなら離さない」
“従え”と目で訴えてる。
もうこれは脅迫。
「霧野ちゃん諦めた方がいいよ」
凌も蓮の背中から圧を感じたのかわたしを説得してくる。
私が説得するつもりで来たのに説得されるってもう手の打ちどころがない。
それに和藤先生に見られてるのが1番私にとってはまずい。