私は1人じゃない


「勇斗さん、やめて…………」
「うん?何を?」


「………だから頭ポンポンとか照れるから」


もっと恥ずかしくてリビングに穴がないか探してしまう。


残念ながらバリバリに床で穴なんかない。


「それ可愛すぎるからもっとしたくなるよ?」
「………」


勇斗さんが近づいてくる。


ソファーに座ってる私は端の方に移動するけど、逃げていることにはならなくて、


「こっち見て」


ゆっくりと顔を上げると、勇斗さんがこっちを見ている。


お風呂上がりだからボディーソープのバニラの匂いが漂ってその匂いだけで頭がクラクラしそう。


「修学旅行では俺と離れるけど杏衣ちゃんは平気?」
「……顔は見れるから離れてない」


「……杏衣ちゃんは強いね、俺はずっと杏衣ちゃんの隣にいたいのに」
「…………」


「杏衣ちゃんが他の男とイチャイチャするの嫌だな」
「イチャイチャなんかしないよ」


誰のことを言ってるんだろう…?


私に他の男なんていない。


勇斗さんしかいないのに。


「俺のことだけ考えてて」
「…………」


「水樹じゃなくて俺のことだけ考えてて」
「……………」


「返事は?」

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