私は1人じゃない
「………杏衣、好きな人いるだろ」
胸がギクっとする。
目が泳ぎそうになったけどこらえて気付かれないように平常心を保つ。
「なんでそう思うの?」
「杏衣は周りの目とか気にしないだろ、実際体育祭の時大勢の前で組頭をあっけなく振ったんだから。
里美からあんなことされていい気分ではないだろうけど何事もないかのように杏衣なら学校行けるだろ、杏衣は今も周りの視線や言葉より俺と一緒にいるとお前にとって影響があるから嫌なんだろ、だったら好きな人いるか彼氏いるかしか思いつかない。」
………探偵みたいに推理してる。
いや、刑事かな??
蓮の言ってること当たってる。
大当たり、100点満点。
勇斗さんのことでいっぱいなのに蓮と一緒にいるのはキツいし、なんか蓮と一緒にいるの勇斗さんが気にしてるみたいで嫌がってるから蓮といたくない。
好きな人から嫌われたくないのは当たり前だよね。
秋祭りの時、私が言い過ぎて蓮を傷付けてしまった。
今も蓮を傷付けてしまっていると思う。
でも、ずっと隣にいたら蓮を傷つけてしまう。
蓮の気持ちには応えられないから。
「いない」
いるって言ったら勇斗さんだって蓮にならバレそう。
いると知られても“勇斗さんが好き”だとは知られちゃダメ。
それだけは避けたい。