私は1人じゃない
蓮がシャツを脱いで見せてくれた蓮の背中。
切りつけられた跡や大きな火傷跡がある。
背中の左側の肩に近いところに大きな蓮のタトゥー。
火傷跡に混ざって1輪の蓮のタトゥーは大きく咲いている。
蓮も過去辛いことがあっても今まで強く咲き続けてるのかな。
蓮のタトゥーに触れる。
蓮の肩が少し上がった。
「なに触ってんだよ」
「大きくて綺麗だなって……蓮初めて見たけど綺麗だね………」
「お前……」
火傷跡で皮膚はただれていて、切り傷跡も薄くはなっているけど、深い傷だと分かる。
私もこういう傷があるから。
「何で蓮のタトゥーを入れたの?」
「………お母さんが蓮の花が好きで“蓮”と名付けたらしい。でもお母さんは俺を産んですぐに亡くなった。俺は母親の顔を見たことすらない、だから母親が俺の中で生きてる、母親の肩身という意味で入れた。これ誰にも言うな、お前と凌にしか言ってないから」
「そうなんだ………」
蓮も蓮なり頑張ってたんだ、親のために頑張ってたの一緒。
勉強しないでも成績優秀なのは蓮の努力があったから。
蓮がこのタトゥーを入れた意味を知ったからかもっと蓮のタトゥーに手が離せない。
手を離して蓮のタトゥーを見て、蓮のタトゥーにキスをする。
「お前、なにして………」
本当に私なにしてるんだろ。
でも蓮のタトゥーのように強く、いや強すぎるほど生きている蓮が一瞬か細く切なく見えてしまった。
蓮と私の過去を重ねてしまって同情しちゃってるのかな。
私が水をかけられて少し心が弱っちゃってるのかな。