私は1人じゃない



「もしもし、あ、モモカか」


「…………みんないるんだな」


「………分かった行くから、18時な」


誰と電話してたんだろう。


モモカって女性だよね。


前から思ったけど勇斗さんってモテる。


女子生徒から告白されてたところを見てしまったことがあるし、和藤先生カッコいいと数えきれなくらい聞く。


生徒からじゃなくて大人の女性からもモテる勇斗さん。


私なんか目に入っているのかなぁ……。



「そんなに見られると集中できないよ」
「ご、ごめん……」


「キスしたくなった?」
「え?」


「あの時みたいに。俺本当びっくりしたからね」


あの時。


あの時…………。


修学旅行での私がキスしたことだよ、ね、……。


考えるだけで体が熱くなる。


「顔赤いよ?」
「赤くない」


「だったらこっち見て」
「…………」


「こっち見てよ」


顎を持ち上げられて目が合ってしまう。


「可愛い」


勇斗さんの顔が近づく。


距離がゼロになると思って目を瞑る。


「杏衣ちゃん」


名前を呼ばれて目を開けると、


「キスされると思った?」
「え?」


「キスなんてしないよ、目にゴミがついてたから取っただけ」



うーーー…………。


私のことをからかって笑ってる。


「私のことからかわないでください」
「からかってないよ、本当にゴミついてたんだよ」


「だったらゴミついてるって言って取ればいいのに顔近づけて取る必要ないじゃん」
「ごめん、杏衣ちゃんの顔可愛いからついいじめたくなっちゃう」



そうやって笑ってる勇斗さんの方が可愛い。



なんて言ってる場合じゃない。
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