私は1人じゃない




「霧野さん」



聞きたくない人の声。


「…………」
「霧野さん、ちょっと話がある」


「私はない…………です………」
「どうしても俺が話したいことがあるんだ、来て」



手を掴まれて連れて来られた数学教材室。


「痛い……」
「昨日なにがあった?」


「何もないよ、朱莉の家に泊まっただけ」
「宮原に聞いたら泊まってないって言ってたよ、どこで泊まってたの?」



「………先生に関係ない」
「関係ある、大いに関係ある、心配なんだよ」



勇斗さん、怒ってる。


いつもの優しそうな勇斗さんじゃない……。


「心配しないで、私もう高2だから、自分のことは自分で出来るから」
「どうしたの杏衣ちゃん」


「どうもしてない」
「杏衣ちゃんおかしいよ、言わないと分からない」


「………私、離れます、勇斗さんの家から出て行きます」
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