私は1人じゃない

「……あぁ、そうか」
「そうかってなんだよ」



「杏衣ちゃんは俺のもんだから奪うなと言うと思った？」


あぁ、思った。


和藤からも宣戦布告されると思ったよ。


「聞いただろ、好きじゃないんだって、俺のこと……もう家出て行くとか言われた」





杏衣は和藤が好きなんだよ。


杏衣がさっき認めたんだぞ。


なんで和藤に嘘をつく。


どうして自分の気持ちに嘘をつく。


こいつが先生だからか？


それだけじゃない気がする……


「それで、どうすんだよ、諦めるのかよ」
「さあ、どうだろうな」


「なんだそれ曖昧にすんな」
「今きっぱり決めれるわけない、俺は本気で好きなんだから」


………チッ


でもそうなんだろうな、見れば分かる。


いつも柔らかい先生の理想像みたいな顔してるのに今は少し眉間に皺寄せてちょっと怖い顔してる。


「なのに離したのかよ」
「霧野さんがそう言ってるのを止められない」


「そうか」
「1つ言うが、水樹にチャンスをくれた訳ではないから勘違いするなよ」


「するわけねえだろ」



そんなチャンス関係なく俺は杏衣しか見えてねえんだから。