私は1人じゃない




「なにバカ連発してんだよ」
「蓮、なんでここに?」


「夜飯買いに来たんだよ」
「そっか」


「なに一人で帰ろうとしてんだ、ちょっと待ってろ」


コンビニでどうやら2人分の食べ物を買ってきてくれた。


「なんで泣いてる」


あーやっぱりバレた。


顔を下げて隠してたのに。


「……またあいつ関連か」


あいつって、勇斗さんのことだろう。


完全に目の敵にしているみたい。


「勇斗さん、前梨沙子先生と付き合ってたんだって」
「……保健の先生か」


「うん、子供まで出来てたらしいんだけど流産したらしくて、それでよく分かんないけど別れたんだけど梨沙子先生はまだ勇斗さんのこと好きみたい」
「それ知って悲しんでんのか」


「そうだね」
「それでお前はどうしたいんだよ」


その答えが出てこない。


ただ辛いってだけで逃げてる。


「まだ分かんない」
「あいつと話して結論出さなきゃいけないんじゃないのか」


そうだよね。


勝手に出て行ったし、本当は勇斗さんのこと嫌いになったわけじゃない。


ちゃんと会ってまずは話さなきゃ。


「そうだね、ありがとう」
「杏衣さ、」


「あいつを忘れろなんて言わねえから俺と一緒にいること考えてくんねーか」
「それって告白?だよね……」


「そうに決まってんだろ」


勇斗さんのこと忘れなくていいとか、優しさ出てる。


蓮なりに配慮してるのかな。


その優しさが胸に染みてもっと涙腺が緩む。


「もう泣くな」


強く肩を抱かれてその手の部分はとても温かった。
< 280 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop