私は1人じゃない
一回唾を飲んで緊張しながらインターホンを押す。
肩が凝ってる気がする。
「来たね」
「うん」
「座って」
「うん」
勇斗さんの顔をよく見れない。
緊張する。
なに言われるんだろう。
「杏衣ちゃん、ごめん」
「え?」
まさかの言葉にびっくりする。
勇斗さんは私になにも申し訳ないことしてない。
心当たりがあるのだろうか。
「俺は杏衣ちゃんと一緒に生活できればよかった、でも徐々に俺の気持ちがそれだけでは無くなったんだ。
ずっと辛くてもなんとか頑張る姿、弱った時に見せる可愛い姿、寝る時に言う寝言でさえ可愛いと思える。
俺は、教師と生徒の関係を超えてはいけないと思っていたけど、ずっと一緒にいたい。だから、俺は、杏衣ちゃんが好き」
「………」
勇斗さんが私の目を逸らさずにゆっくりと言った。
何故か涙が出てきた。
なんで。
嬉しいから?素直に喜べないから?
「梨沙子先生…………、梨沙子先生との関係を教えてくれませんか…」
勇斗さんの目が大きくなった。
私が梨沙子先生と勇斗さんの関係を知ってるとは思わなかったはず。
「梨沙子は大学の同期だ、同じ学部でバイト先まで一緒だったから交際をしていた。大学4年の時、梨沙子が妊娠したんだ。
俺はけじめで結婚をしようと思っていた。でも梨沙子が妊娠4ヶ月の時に流産したんだ。原因は染色体の異常だと言っていたが梨沙子は俺の公務員試験勉強のために体がしんどくても言わなかったんだ。
俺も梨沙子も本当に悲しくて、梨沙子は立ち直れず別れを告げられたんだ。今思えば引き留めて梨沙子を守るべきだったと思う。
別れて4年が経った今俺はやっと梨沙子との出来事を思い出さないようになったんだけど、梨沙子はまだ過去にできてないと言われた。両親にもそのことを話したと言われた。
梨沙子とは大学の同期であり、同じ同僚であり、友人なだけで、
でも俺は杏衣。
杏衣だから。」