私は1人じゃない
「梨沙子」
「いきなり呼んでどうしたの?」
仕事終わり、海が見える場所で俺の車に梨沙子が乗ってきた。
「俺には好きな人がいる、どうしても守りたい、忘れられない人がいる」
「そう」
「だから俺のことは綺麗に忘れてほしい、いや、同じ学校で働く以上無理かもしれないが同僚として接して欲しい」
「私が未練がましいのよね、自分から別れを切り出したのにまだ忘れられないと言ってるんだから
私もずっと考えたの、勇斗は私にとって1番優しくて、布団のように包み込んでくれて安心できる人。その優しさから抜け出さないといけないのかもしれない、ずっと過去だけ見るわけにはいかないから。勇斗が前に進んだから、負けずに私も前に進むわ。これからは同僚として話しましょう、ありがとう」
梨沙子の顔は清々としていて自分の決断に迷いがないように見えた。
「こちらこそありがとう、梨沙子に出会えて良かった」
「最後にハグしよう?」
「ああ」
「好きな人と結ばれるように頑張ってね、実は分かるんだけどね♪」
「今なんて?」
「ほぼ毎日会ってるんだもの、分かるわよ」
「反対しないんだな、本当はいけないことなのにな」
「乗り越えなさいってこと、私はずっと味方でいるからね〜、じゃーね」
随分と気分良さげだな。
まさか梨沙子にまでバレていたとは。
これで梨沙子とはお互い納得のいく形で完全に同僚になった。