私は1人じゃない
学年会議の時。
これからの方針や修学旅行の話、冬から本格的に始まる進路のことについて話し合いをする。
修学旅行は、京都か。
何度も行ったからつまんないなぁ〜なんて思いつつ、先生方の話に耳を傾ける。
会議の最後に、学年主任が、
「木原先生、霧野はまだ来てないですか?」
「はい、杏衣ちゃんはまだです」
「霧野、連絡も取れないんですか?」
「電話に出ないんです、母親に電話しても知らないの一点張りで」
「知らない」の1点張りって……。
娘を探そうとも思わないのか。
杏衣ちゃんのあの傷を見ればお母さんがどういう人かは大体予想がつくし、なぜ杏衣ちゃんが家を出たかも分かる。
だから俺は家に戻るのを引き留めた。
たまたま同じ学校の教師と生徒になったけど、事情があってのことだから一緒に住んでいることは学校にバレなければいい。
「会社で忙しいのか?」
「待つしかないです、それに杏衣ちゃんはしっかりしてますから学校には来ます」
「そうだな、成績も優秀だし待つしかないな、じゃ会議終わるぞ」
3時間にも及ぶ会議は終わった。