私は1人じゃない
「杏衣ちゃん、今日は俺が皿洗いするから」
「でも久しぶりに働いて疲れてるんじゃ…」
「いいの、たまにはさせて」
「分かった」
気が使えて優しい。
でもずっと人の目線を気にしすぎてるせいか、程度が過ぎることもあるけれど、今は俺に慣れているのか自然体を見れている気がする。
「勇斗さん、私も学校、行きます」
「無理しなくてもいいんじゃない?もう心は大丈夫?」
「友達が待ってるし、勇斗さんが働いてるのにずっと家で遊んでるわけにもいかないから…」
こういうところ。
俺のこと気にしないでって言ったのに気にしてる。
「本当に無理しないで」
「ありがとう、大丈夫だから」
杏衣ちゃんは無表情で淡々と口を動かしているか手を動かしている時がある。
それか、ぼーっとしているか。
杏衣ちゃんの心には喜怒哀楽は存在しているのだろうか。
自然体とは言っても杏衣ちゃんが自分を出していないと言うわけではない。
だからと言って自然体じゃないからわざと作ってるものでもない気がする。
でももうちょっと人間らしく息の根を復活させてほしい気はする。
俺が杏衣ちゃんが通っている南高で働いてると言おうか迷ったけど、驚かせてみようかなという謎のアイデアが現れたから、言わずに杏衣ちゃんが気付くのを待ってみることにしよう。