私は1人じゃない
連れてこられたのは2階の空き教室の隣の数学教材室。
「ここ俺のすみか」
本棚には数学の参考書が隙間なく並べられていて、どころどころにある机には乱雑に教科書が置いてある。
奥に先生のテーブルと椅子がある。
隣に私の椅子と机を置いて、
「ここで食べようか」
「うん」
私は弁当、先生はサンドイッチを食べる。
「杏衣ちゃん、料理が上手だよね」
「いつもしてた」
ママがご飯を作ってくれなかったからいつも私が自炊をしていた。
だからある程度の家庭料理は作れる。
「得意料理は?」
「うずらの卵を豚肉で巻いたやつとか」
「それ食べたことないな」
「今日の夜作ろうか?」
「今日はカレーの気分だからカレーライスが食べたい」
「はーい、作っておきます」
「後さできればいいんだけど、俺の弁当も作って欲しいんだけどだめかな?」
「いいですよ!」
私だけ弁当で勇斗さんがコンビニ飯は可哀想だし2人分作るのは苦ではない。
「ありがとう!本当助かるし、杏衣ちゃんの料理美味しいんだよね」
私が作ったご飯を食べる度に必ずおいしいと言ってくれる。
作る気満々になる。
「毎日作るから」
「やった、仕事頑張れそう」
そう言って私の弁当の中のタコさんウィンナーを頬張っている勇斗さんを見て傷ついた心が暖まった気がした。