私は1人じゃない
「霧野さん、言っていいよ、宮原さんは霧野さんの友達でしょ」
和藤先生が朱莉のことを信じてくれているみたいで、いや、もう逃げられないから朱莉のことを信じるしかないと思ったのだと思う。
もう言うしかない。
「朱莉、誰にも言わないで欲しいんだけど、和藤先生と暮らしてる、ていうのも私が家を出て行った時にたまたま助けてくれたのが和藤先生でその時はここの学校の先生じゃなかったしまさか同じ学校になるとは…」
今、奥の扉の部屋の和藤先生曰く、“意味不明の応接室”で話している。
いつも採点とかはこの部屋でしているらしい。
「大丈夫だよ、私勘違いなんてしない。杏衣のことだし恋人関係ではなくて助けてもらって一緒に住んでる同居人ってことでしょ」
「そういうこと」
「でも和藤先生の弁当作ってるところを見るとちょっと怪しいなぁ〜〜」
「朱莉!本当だってば」
「……そうそう、俺が頼んだ、ずっとコンビニも飽きるから、それに杏衣ちゃんの料理美味しいから」
「そうなんだ、杏衣本当料理上手だから、先生、杏衣が作るパウンドケーキめっちゃ美味しいから食べてみほかのケーキは食べれない」
「え、霧野さん、スイーツも作れるんだ!」
小学生の時にクラブ活動があってそこで料理クラブを選択した私は料理研究家の吉田先生っていうおばちゃん先生からいろんな料理を教えてもらった。
パウンドケーキもその1つで抹茶味やドライフルーツを入れたりいろんなアレンジを加えて作ったことがある。
でもスイーツを作っても食べてくれる人がいないから今まで家ではあまり作ったことはない。
「今度作ってよ!」
「う、うん…先生、弁当食べて」
「ありがとう」
「うわー、私も食べたい」
「宮原さんにはあげないから」
「そんなの分かってる、でも食べたいなぁ〜〜」
今日は、うずらの卵を豚肉で焼いたやつ入っているし、先生が好きな唐揚げも入ってる。
今日は全体的に肉肉しい。
「私、弁当教室だから桜介とでも食べようかな〜、じゃ2人で楽しんで〜」
「あ、朱莉?」
「数学の解説聞きたくないしもう逃げる、じゃね!」
突っ込む暇もなく朱莉は行ってしまった。