私は1人じゃない





そんな家主って表すほど優位な立場に立っているとは思わないけど突っ込まないでおこう。



でも杏衣ちゃんが俺との関係性を同居人と家主って言った時心がズキンと聞こえた気がした。


どうしたどうした俺。


その通りなんだしそれ以上それ以下もない。


そんな細かいことを気にする必要はない。


今は仕事仕事。


朱莉はそのまま受け取ってくれているっぽくて霧野さんを分かっているんだなと思う。


弁当を開けると、俺がリクエストした唐揚げとかうずらの卵を豚肉で巻いたやつが入っている。


俺が「美味しい」と言うと、


「良かった…」と言ってニコッと微笑んでくれる。


その目がとろけるような感じ俺の気持ちが溶けそう。


杏衣ちゃんは完全に無意識なんだけど、1つ1つの表情が俺の心にスッと入っていく。


宮原が出て行って、安堵した表情もそう。


俺のために毎日作るって言った時の目が覚めているような表情。


自分の弁当に入っている唐揚げを食べて美味しい!と言って目を輝かせている顔もそう。


杏衣ちゃんが俺の家に入った時は寂しそうで、目に光がなくて何もかも諦めたような顔をしていたのに、今はいろんな気持ちを顔に出せている。


俺のおかげだったら、嬉しいな。


「俺………」


俺の気持ちに名前をつけるのは敢えてやめた。


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