私は1人じゃない
テントに戻ると、ハチマキ交換しない?
って言う声で飛び交っている。
ハチマキ交換がそんなにいいことなのか、いい思い出にもなるつもりなのか、私にはよく分からない。
「杏衣、ハチマキ交換言われた?」
「まぁね」
「さすがモテる人は違うね〜」
「違うよー」
普段は朱莉と2人で昼ごはんを食べているけど今日は朱莉の友達2人と私と朱莉の4人で食べている。
朱莉は私が恋をしないのも人を好きにならないのも知っているから、何も言って来ないけど事情を知らない人たちは突っ込んでくる。
「杏衣ちゃんはモテてるよ〜!」
「ハチマキ交換したらいいのにー」
「好きな人いないから交換する人いないんだ」
「すぐ彼氏とかできそうなのに〜」
すぐに「彼氏」を作るものでも無いと思うけど。
もう2人の攻めがしんどい。
「朱莉は柊木と交換した?」
ずっとおにぎりをモグモグしている朱莉に匙を投げる。
朱莉は、「なわけない、付き合ってるんだから交換する意味ないない!」
と言っているけど、朱莉のハチマキが長くなっていて、柊木と交換してるって分かったけど言わないで隠している朱莉を見て、照れているんだなって思って、この2人を見てるだけで恋しなくていいかな。