私は1人じゃない
頭が痛くて、起きると、黒の革の匂いがして、バッと起きると、先生がキッチンに立っている。
「やっと起きた?」
「うん、今夜?」
目を開けるとソファーでぐっすり眠ってしまっていた。
勇斗さんが布団を掛けてくれたみたい。
「夜の8時だよ」
「そんな遅くなったんだ…」
「電話に出ないから何かあったのかとびっくりしたよ」
「え、そうなの?」
着信履歴を見ると勇斗さんからの電話が3件不在着信になっている。
「ごめん、寝てた」
「ゆっくり寝てたみたいでよかった、何食べるか聞こうと思って電話したんだけど出なかったからパスタ作ったけど、食べる?」
「食べる、お腹すいた」
私が大好きなカルボナーラ。
ベーコンは多くて胡椒が効いてて美味しい。
「勇斗さん、料理出来るじゃん」
「レシピのおかげだよ」
「本当に美味しい」
「杏衣ちゃんさ、体育祭勝ったじゃん、俺にご褒美貰えるの忘れてた?」
完全に忘れてた。
いきなり私に関わってきたトイプードルと冷血男が脳みその中にも入ってきてご褒美なんて考える余裕なんてなかった。
「その顔は忘れてたね?」
「……うん」
「ひどいな、俺何も求められるんだろうってめっちゃ怖かったよ」
「そんな大きいの求めないし、何も欲しいのない」
「でもせっかくだし何か欲しいのない?」
「……ないかなあ」
やりたいこともないし欲しいものもない。
「うーん服とか美容系とか」
服はママのブランドの服が大量にあるし、メイク道具も最近は全然してないけどあるのあるし最新コスメとか興味ない。
「じゃ俺にして欲しいことは?」
「あ……」
私には避けられないことで勇斗さんの力が必要なこと。
勇斗さんがいれば傷つかない気がする。
前に進める気がする。
「1つお願いしたいことがあるんだけど……」
「いいよ!」
勇斗さんは目を開いてこっちを見る。
怖がってたのは嘘なのかって思うくらいに目をキラキラさせてる。
「ありがとう」