私は1人じゃない




今年の春。


新学期は俺にとって何もない日常だが、絶対に来いと言われ仕方がなく学校に行ったらクラスは変わってるし、(凌と同じでよかった)担任は同じ怒鳴り声だけ怖いジジイだし早く帰りたいと思っていた。



でも、女が俺を離さない。


凌は担任から呼ばれてるし俺だけで対応するのはめんどくさい。


「俺用事あるから、また今度しようか」
「えーなんで、今したーい」


「俺今日だるいんだよ」
「だるいなら保健室に行こう?」


そう言って誘ってやるパターンか。


里美は俺が1年の時からずっと付き纏っているやつ。


でも付き合うことを求めてこないから都合の良い関係で今までやってきた。


久しぶりに会ったし機嫌を損なわせるわけにはいかないから今日は里美に合わせるしかなさそうだ。


「保健室に行こうか」



保健の先生はたまたま居なかった。


ベッドに座って薄いカーテンに囲まれてキスをする。


あー最後までするのめんどくさい。


結局気持ちよくなるんだろうけど時を流すことができない。


「里美、今日はキスだけでいいか」
「なんでー?保健室行こうって言ってくれたの蓮じゃん」


「やっぱだるい」
「そう言って他の女の子でもいるの?」


「いるの分かってて俺と関係持っただろ」
「………分かってる、分かってるけど」



けど、の続きは何となくわかる。


でも受け入れられない。


なんで女は私だけを見て欲しいなんて思うのだろうか。


でも里美が普通なんだろうと思う。


誰か1人を愛して愛されるのが普通で、私だけを見て欲しいと好きな人なら求めるのだろう。


俺がおかしい。


人を愛せなくなった俺がおかしい。


俺を好きになっても里美にとって良いことはない。


「里美、ごめん今日はやめよ」
「…分かった」


里美は半分涙目になって保健室を勢いよく出て行った。


「はぁ……」


思いっきりベッドで寝て理由がないため息が連発する。


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