私は1人じゃない
「誰もいない……?」
保健室に誰か入ってきた。
「先生いない……誰か寝てる」
俺のことだろうが、寝てるけど今まであんなことにベッド使ってたってバレたらやばいよなとか今更考えが出てきた。
もう遅い。
先生が来る前に出たいが横になったし女はいるし出るに出られない。
「ちょっと借りよ」
金属の音や湿布を剥がしたりしている。
どこか怪我でもしたんだろう。
「あっ、痛い!」
大きな声が聞こえたので思わずカーテンから少し覗いてしまった。
そしたら、あいつは熊谷……杏衣か。
ふくらはぎが青タンだらけで優しく塗り薬を塗っている。
怪我したより怪我させられたんだろう。
生々しくて「うわっ」と声が出る。
聞こえてないみたいで少しホッとするが当の本人は痛そうにしてるけど無表情で手当てをしている。
手当が終わって靴下を膝まで上げて、偉いなこいつ。
膝上スカートでちょっとおしゃれしてるような顔をしているのにな。
スカートは膝まであるし、ここまで守る奴あんまりいない気がする。
少なくとも俺の周りには。
こいつ真面目なのか…?
「痛くない、この傷は痛くない」
そう言って杏衣は保健室を出て行った。
痛くないわけがない。
実際に右足を引きずっていたし。
痛いのに痛くないフリ。
俺と似ている気がした。