木沢彰吾、禁煙を決意する 『恋に異例はつきもので』おまけSSその1
***

「結婚してくれ」
 先週、会社帰りに食事を共にしたとき、プロポーズした。

「もう1分も1秒も花梨と離れていたくない」

 花梨は頬を真っ赤に染めて、それでもしっかり頷いた。
「うれしいです、彰吾さん……。わたしも……ずっと一緒にいたい」

 はにかんだその顔を見たとたん、ぐわっと身体の内側から何かが突き上げてきた。

 後悔した。
 家に帰ってからにすればよかった。
 そうしたら、すぐにでも抱きしめられたのに。
 だが、彼女は俺のそんな、でれでれ気分に冷水を浴びせた。
 とてつもない難題を突き付けて……

「でも彰吾さん、ひとつだけお願いがあります」

「うん? 新婚旅行に行きたい場所でもあるのか? どこでもいいぞ。南極だろうが、ガラパゴスだろうが、月だろうが、どこだって連れてってやるよ」

「そうじゃなくて……あの、怒られるかもしれないけど」

「なんだ?」
 
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