木沢彰吾、禁煙を決意する 『恋に異例はつきもので』おまけSSその1
 花梨は黒目がちな真ん丸な瞳をいっそう丸くして俺の目を見た。

 そして……言った。
「禁煙してほしいんです」

 はっ?

「禁煙? おまえ、本気で言ってるのか」

「もちろんです。ずっと言おうと思ってたんです。とにかく吸い過ぎです、彰吾さんは。このままじゃ、肺ガンへの道、まっしぐらです」

「いや、しかし……それは」

 俺は抵抗した。
 いくら、花梨の頼みとはいえ、こればっかりは。

 なにせ大きな声じゃ言えないが、学生服の来ている時分からの長い付き合いだ。
 とてもじゃないが煙草が吸えない生活なんて考えられない。

「それは……無理だな。肺より先に心が病む。無理だ」

 すると、花梨は悲しげな顔で最後 通牒(つうちょう)を突きつけた。

「わたしと煙草とどっちが大事なんですか?」と。
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