「みえない僕と、きこえない君と」
(その人のこと、好きなんだね)
羽柴さんとの出会いからいままでを、具にに
聞き出した彼女は、まっすぐ目を覗き込んだ。
少し躊躇ってから、こくりと、頷く。
あらためて、自分の気持ちを探してみたけれど、
やはり、この答えにしか辿り着かない。
彼に話しかけられると嬉しいし、彼のことを
考えるだけで、きゅっ、と、胸が苦しくなる。
どうして、どこが好きなのか?と、理由を
聞かれると、それは上手く説明できないけれど。
彼と一緒にいたいと思うのだ。ずっと。
こんな気持ちになるのは人生で初めてだし、
手話を勉強してくれると言ってくれた時は、
本当に、本当に嬉しかった。
(好きな人出来て、よかったね。きっと彼も、
同じ気持ちだよ)
咲ちゃんが満面の笑みで祝福してくれる。
まだ、彼の気持ちを確かめた訳でもないのに、
彼女にそう言われると、そんな気がしてくる。
(そうかなぁ。そうだといいな)
首を傾げたあと、わたしは、ちょっと悲しい
ことを考えた。
普通の、何の障がいもない二人なら、
もしかしたら、このまま恋を実らせることが
出来るかも知れない。
けれど、わたしたちは違うのだ。
わたしには生まれつき難聴があって、彼には
視覚障がいがある。それにもし、将来、彼が
光を失うことがあったとしたら……
漠然とした不安が心の中を散らかして、
散らかして、彼を想う温かな気持ちが、
隅に追いやられてしまう。
その心境をそのまま伝えると、咲ちゃんは
とても真剣な眼差しを向けて、言った。
(もしも、わたしが彼と同じ病気だったら、
弥凪は友達やめる?)
彼女の問いに、ぶんぶん、と大きく首を振る。
(わたしも、同じ。たとえ、目が見えなく
なったとしても、弥凪と一緒にいたいし、
一緒にいられるように努力すると思う。
そういうことなんじゃないかな。一番大事な
ことって、二人の気持ちなんじゃないかな?)
そう言われた瞬間、ツンと鼻先が痛んだ。
咲ちゃんの言葉が、咲ちゃんの気持ちが嬉しくて、
何だか泣きたくなってしまう。
こういう気持ちを、きっと、“幸せ”っていうん
だろうな、と、胸の内で思いながら、わたしは
満面の笑みを向けた。
(ありがとう。気持ちが、軽くなった)
笑顔を見た親友が、満足そうに頷く。
そうして、さっき脇に寄せたばかりのメニューを
取り出すと、デザートのページを開いた。
(ねぇ。一緒にパフェ食べない?)
彼女の提案に、わたしは二つ返事で頷いたのだった。
-----その会に参加するのは、しばらくぶりだった。
僕は閑静な住宅街の一角にある、総合福祉会館の
入り口をくぐり、エレベーターで3階に上がった。
羽柴さんとの出会いからいままでを、具にに
聞き出した彼女は、まっすぐ目を覗き込んだ。
少し躊躇ってから、こくりと、頷く。
あらためて、自分の気持ちを探してみたけれど、
やはり、この答えにしか辿り着かない。
彼に話しかけられると嬉しいし、彼のことを
考えるだけで、きゅっ、と、胸が苦しくなる。
どうして、どこが好きなのか?と、理由を
聞かれると、それは上手く説明できないけれど。
彼と一緒にいたいと思うのだ。ずっと。
こんな気持ちになるのは人生で初めてだし、
手話を勉強してくれると言ってくれた時は、
本当に、本当に嬉しかった。
(好きな人出来て、よかったね。きっと彼も、
同じ気持ちだよ)
咲ちゃんが満面の笑みで祝福してくれる。
まだ、彼の気持ちを確かめた訳でもないのに、
彼女にそう言われると、そんな気がしてくる。
(そうかなぁ。そうだといいな)
首を傾げたあと、わたしは、ちょっと悲しい
ことを考えた。
普通の、何の障がいもない二人なら、
もしかしたら、このまま恋を実らせることが
出来るかも知れない。
けれど、わたしたちは違うのだ。
わたしには生まれつき難聴があって、彼には
視覚障がいがある。それにもし、将来、彼が
光を失うことがあったとしたら……
漠然とした不安が心の中を散らかして、
散らかして、彼を想う温かな気持ちが、
隅に追いやられてしまう。
その心境をそのまま伝えると、咲ちゃんは
とても真剣な眼差しを向けて、言った。
(もしも、わたしが彼と同じ病気だったら、
弥凪は友達やめる?)
彼女の問いに、ぶんぶん、と大きく首を振る。
(わたしも、同じ。たとえ、目が見えなく
なったとしても、弥凪と一緒にいたいし、
一緒にいられるように努力すると思う。
そういうことなんじゃないかな。一番大事な
ことって、二人の気持ちなんじゃないかな?)
そう言われた瞬間、ツンと鼻先が痛んだ。
咲ちゃんの言葉が、咲ちゃんの気持ちが嬉しくて、
何だか泣きたくなってしまう。
こういう気持ちを、きっと、“幸せ”っていうん
だろうな、と、胸の内で思いながら、わたしは
満面の笑みを向けた。
(ありがとう。気持ちが、軽くなった)
笑顔を見た親友が、満足そうに頷く。
そうして、さっき脇に寄せたばかりのメニューを
取り出すと、デザートのページを開いた。
(ねぇ。一緒にパフェ食べない?)
彼女の提案に、わたしは二つ返事で頷いたのだった。
-----その会に参加するのは、しばらくぶりだった。
僕は閑静な住宅街の一角にある、総合福祉会館の
入り口をくぐり、エレベーターで3階に上がった。