8月25日(前編)
少しするとトントンと肩を叩かれた。

「紗良ちゃん?」

と呼んだのは水樹くん。

だけど、その声はきっとわたしだけにしか聞こえていない。

それほど小さかった。


後ろのほうで与田くんたちの声が聞こえるから、まだ顔は上げられそうにない。

すると、わたしの気持ちを読んだかのように水樹くんが与田くんたちに声をかけた。


「悪いけど先に帰ってて?」

「それはいいけど…夏目さん大丈夫そ?」

「うん、とりあえずまた明日な」


水樹くんがそう言うと与田くんたちの声が遠くなる。

「紗良ちゃん泣いてるの?」
< 124 / 530 >

この作品をシェア

pagetop