8月25日(前編)
まじまじと見た与田くんは思ったより幼い顔をしていた。

「えっ?……夏目、さん!?まじで!?」

与田くんは驚いた顔のまま口元を手で覆る。


途端に周りの視線が一気に集中するのがわかった。

やめてっ……この視線は嫌いだ。


耐えられなくなり、千波の手を払うとリュックを持って教室を飛び出した。

やっぱり無理だ…わたしには無理。


「紗良っ?」

途中で朝陽に声をかけられたけど足を止めることはできず…


そのまま下駄箱までくると誰かに腕を掴まれた。

「紗良ちゃん、」

と呼ぶのは1人しかいない。


振り向くとそこには水樹くんが立っていた。
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