8月25日(前編)
そう言うと手を離して歩き出す……千波。

少し先を歩く千波の背中を見てみるけど、やっぱりどう見てもわたしと絡むような人ではない。


何が目的なんだろう?

と考えているとパッと振り返った千波に慌てて俯いた。

「てかその前髪どうしたの?そんなんで見える?」

見えなくていい。

余計なものが視界に入ってこないならそれでいい。


わたしからしたらこの前髪は命の次に大事なもの。

「切るって約束してたけど本当に切ってくるの?」


あーそうだった…そんな約束してしまったんだった。

だけど、その約束を守るつもりはない。

この前髪がないとわたしじゃいられない…。
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