8月25日(前編)
顔を上げることなんてできない。

今だけは水樹くんと会いたくなかった。


どうしてこうも運が悪いんだろうか。

「どうしたの?何で1人?」

と優しい水樹くんの声が余計嫌になる。


何も答えないでいると水樹くんは目の前にしゃがみ込み顔を覗き込んできた。

そんなことされると嫌でも目が合ってしまう。


「紗良ちゃん?」

水樹くんから視線をそらし、立ち上がるとそのまま歩き出した。

話したくない。

…話せないよ…。


だって今話したらわたし…泣いてしまう。


「ちょっと待って、」

と水樹くんに腕を掴まれると我慢の限界だった。
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