8月25日(前編)
朝陽に逃げようと思っているから。

朝陽の優しさにつけこもうなんて…汚い考えを持ってしまっているから。

「…帰ろ?」

朝陽は何も言わず聞かずそう言っただけだった。


手を引かれて朝陽と歩く。

「りんご飴、やっぱり3本買った」

そう言うとりんご飴を目の前に差し出してくる。

本当に3本買ってる。

「明日にでも食べな?」

「…ありがと」

朝陽の存在はやっぱり大きいな…。


こんな汚い心を持ったわたしを知ったら朝陽はどう思うのかな?

好きだと言ったことを後悔するのかな…?


あんなに前向きでいられたのに、今では後悔しか残っていない。

残りの夏休みは抜け殻状態だった。

そして16歳の誕生日も心の底からは喜べなかった。
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