8月25日(前編)
「…平野くん…ごめん、今日はもう帰る」

1人なってまず気持ちを落ち着かせたい。

それからゆっくり考えたい。


「…そうだよね。じゃ、今日はお疲れ」

平野くんはそう言うと階段を登って行った。


きっと、水樹くんのところに向かったんだろう。


わたしは終礼にも出ずに学校を後にした。

帰って色々考えるつもりでいたけど、脱力感がすごくて何も考えられなかった。

というより考えたくもなかった。


平野くんが言ってくれていたことが本当だとしても、水樹くんに振られたことに変わりはない。

これが現実。


水樹くんを好きになったあの頃は、何も求めていなかったのに…

今のわたしといったら欲の塊でしかないんだね…。
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