8月25日(前編)
少し時間を置いて下駄箱に向かうと、校舎に人の気配はなかった。

そっか…今日って始業式だったんだった。


明日からまた水樹くんの背中を見なきゃいけないんだ。

「はぁ…」

無意識にため息がこぼれた。


トボトボと校門を抜けると「夏目紗良、ちゃん?」と初めて聞く声に顔をあげた。

見ると、そこにはどこかで見たような…薄っすら見覚えのある顔の女子が立っていた。


「えっと…」

誰だっけ?

制服が違うところを見れば他校の子だろう。


だけど全然思い出せない。


「わたし、奈々って言うんだけど…慧から聞いてないかな?」

奈々ってわたしが知る人は1人しかいない。
< 284 / 530 >

この作品をシェア

pagetop