8月25日(前編)
そのままジッとしていると、ドアの向こうから声がした。

「紗良ちゃん?いるんでしょ?」

水樹くんだ。

またなんで来るかな?…


なんて思っているとドアが開く音がした。

「見ーっけ」

って、かくれんぼしてたわけじゃないんだけど。


「紗良ちゃん泣いてるの?」

と聞いてきた水樹くんがそばにしゃがみ込むのがわかった。

泣いてなんかない。

もう泣いたことなんてここ数年ないくらいだ。


「紗良ちゃんはそのままでいいんだよ」

え……

思わず顔を上げかけてしまう。
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