【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「……そうだな。その方がいいな」

 紅音の言う通りだ。俺と紅音は永遠に一緒にいられる訳じゃない。
 そうなると、この家に住むことは離婚した後はもうない。

「……はい。なるべく早く見つけられるように、しますから」

「まだ期間はある。そんなに焦らなくてもいい」

「……はい」

 紅音の表情はどこか寂しそうで、なんとなく悲しそうにも見えた。

「なんなら、俺も一緒に探してやろうか?」

 と言うと、紅音は「い、いえ。自分で探しますから、大丈夫です」と答えた。

「そうか?何か困ったことがあれば、いつでも言ってくれよ」

「はい。ありがとうございます」
 
 紅音は俺を見て微笑んでいた。だけど近づいていくその期限に、俺も少し焦りを感じているのは確かだった。
 俺たちは離婚する。それは決定的なことだ。どうあがいてもその決定事項がひっくり返ることはない。

「爽太さん。わたしは爽太さんに……幸せになってほしいです」

 紅音は突然、俺の手を握りしめてそう言ってきた。   

「……え?」

「わたしと離婚しても、爽太さんには幸せでいてほしいです。……ずっと」
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