【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
紅音は俺の背中に背中に回して、何度もそう呟いた。
「……紅音」
俺だって、出来ることなら……。出来ることなら、紅音と離れたくない。
離れたい訳がない。……そんな訳、ないだろ。
「……すみません。わたし、夕飯の用意しますね」
紅音は立ち上がると、そう言ってキッチンの方へと歩いていった。
「紅音……」
俺が紅音を悲しませていることは、よく分かっている。……だけど俺は、紅音のことを思っている。
だからこそ、紅音を悲しませないように明るく振る舞っていたつもりだった。……なのに紅音を不安にさせていることに、気付いていなかった。
「紅音、何か手伝うよ」
俺は極力紅音を悲しませないように、明るく振る舞った。
「ありがとうございます。 では、じゃがいもの皮を剥いてもらえますか?」
「分かった」
俺は冷蔵庫からじゃがいもを取り出し、ピーラーを使って皮を剥いていく。
「今日は余りものですが、カレーにしますね」
「それは楽しみだな。紅音の作るカレーは絶品だから」
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、紅音は笑っていた。