【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 加古川からそう言われて俺は、静かに頷いた。

「奥さんのことそんなに大事にしてるのに、離婚なんて……。ちょっと残酷な気もするな」

 そう言われたらそうだ。俺は自分の都合で紅音と結婚した。
 だけどそこに、紅音への配慮が足りていなかった気もした。俺は自分の都合ばかりを押し付けてしまう、ダメな男だな……。

「……俺は政略結婚がイヤだってこともあって、紅音という妻を選んだ。だけど、俺は……。俺はやっぱり、紅音と離れたくない。 ずっとずっと、一緒にいたい……」

 今は本気で、本気でそう思う。俺にはもう、紅音じゃないとダメなんだって……。紅音のことしか、愛せない。
 他の誰でもなく、紅音じゃないとダメなんだ……。なんて今更ながらに気付く。

「それがお前の答え、なんだろ?」

「……ああ」

 紅音はきっとこれだって、いろんな不安を抱えて生きていくに違いない。苦しくて辛いこともあるだろう。
 だけどそんな時に、そばにいてやれるのは誰だ?……俺しかいないだろ?
 紅音のそばで笑いあって、助けあって、幸せを感じられるのは……。もう紅音だけなんだ。
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