【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。
「お前は昔から、そうだったよな」
「え?」
「肝心なことは、いつだって見逃してる。大切な何かを失った時に初めて気付くことも多い。 昔から、そうだった」
加古川の言う通りだ。俺は昔から、大切な何かを見失ってから気付くことが多い。
だけど今回は、失う前に気付くことも出来ている気がする。
「お前は奥さんのことが大切なんだろ?離れたくないんだろ?なのになんで、わざと自分から手放すようことをするんだよ。……そんなことしても、誰も報われないだろ。奥さんもお前も、悲しくなるだけじゃないのか?」
加古川の言葉一つ一つが、俺の中に染み込んでくる。色のない世界がちょっとずつ色のある世界へと変わっていく。
だけどそれは、俺の中にある感情や理性がカラフルに色付いていくからだ。
俺はいつも、加古川からたくさんのことを気付かされる。俺の知らない世界を、作ってくれる人だ。
「……こんな俺でも、幸せになれると思うか?」
「ああ、なれるさ。もちろん」
幸せとは何なのだろうかと、ずっと考えていた。幸せの定義とは何なのだろうかと。
だけど幸せの形なんて、みんな違っていいんだよな。